百合の花Ⅱ - Webのるて

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百合の花Ⅱ

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星たちが眠っている静かな黒い流れのうえを、
白いオフェリヤが大きな百合のように浮かんでゆく、
長いヴェールに横たわってゆっくりと浮かんでゆく……
――遠い森のなかで、獲物を追う声がする。

アルチュール・ランボー「オフェーリア」 粟津則雄訳
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台風が近づいている。雨の夜である。
昼のうちに強い風にあおられてカサブランカの枝が倒れた。
それで已む無くカサブランカは部屋じゅうの花瓶に移され
今は部屋の中で強烈な香を放っている。

鹿の子百合のほうはアジサイが風除けとなって難を逃れ
まだ庭に咲いている。

夜、時々稲妻の光が走る。すると廊下をパタパタ、パタパタ
と忙しく行き来する足音が聞こえる。
うちの愛犬である。稲妻と雷が苦手でいてもたっても居られないようだ。
「とてもじゃないがジッと寝てられなんか居られません。」
と言っているようだ。

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ガドルフはしきいをまたいで、もとの階段室に帰り、それから一ぺん自分の
背嚢につまずいてから、二階に行こうと段《だん》に一つ足をかけた時、
紫《むらさき》いろの電光が、ぐるぐるするほど明るくさし込んで来ましたので、
ガドルフはぎくっと立ちどまり、階段に落ちたまっ黒な自分の影とそれから窓《まど》
の方を一緒《いっしょ》に見ました。
 その稲光りの硝子《ガラス》窓から、たしかに何か白いものが五つか六つ、
だまってこっちをのぞいていました。
(丈《たけ》がよほど低《ひく》かったようだ。どこかの子供《こども》が俺のように、
俄かの雷雨で遁げ込んだのかも知れない。それともやっぱりこの家の人たちが帰って来たのだろうか。
どうだかさっぱりわからないのが本統《ほんとう》だ。とにかく窓を開いて挨拶《あいさつ》しよう。)
 ガドルフはそっちへ進《すす》んで行ってガタピシの壊《こわ》れかかった窓を開きました。
たちまち冷たい雨と風とが、ぱっとガドルフの顔をうちました。その風に半分声をとられながら、
ガドルフは叮寧《ていねい》に云《い》いました。
「どなたですか。今晩《こんばん》は。どなたですか。今晩は。」
 向《むこ》うのぼんやり白いものは、かすかにうごいて返事もしませんでした。
却《かえ》って注文《ちゅうもん》通《どお》りの電光が、そこら一面《いちめん》
ひる間のようにしてくれたのです。
「ははは、百合《ゆり》の花だ。なるほど。ご返事のないのも尤《もっと》もだ。」
 ガドルフの笑《わら》い声は、風といっしょに陰気《いんき》に階段をころげて昇《のぼ》って行きました。
 けれども窓の外では、いっぱいに咲いた白百合《しらゆり》が、十本ばかり息もつけない嵐《あらし》の中に、
その稲妻《いなずま》の八分一秒《びょう》を、まるでかがやいてじっと立っていたのです。

「ガドルフの百合」 宮沢賢治 (青空文庫より)
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稲妻の中に揺れる白い百合の群れは、小さな人影を思わせる。
ガドルフの百合も折れてしまったが、我が家の百合もやはり倒れてしまった。

闇の中で目を閉じ、雨音に耳を澄まし匂いを探る。
かすかに階下にある百合の香を感じる。

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うつつなき眠り薬の利きごころ百合の薫りにつつまれにけり
                   『鍼の如く』 長塚節
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